第7章 Small Woman
この少女の怯え方に、見覚えがあった。
ここに居ていいのか。自分は場違いじゃないだろうか。
そんな不安。私も、抱えていた不安。私は、江戸川くんや博士がその不安を取っ払ってくれたけれど、彼女のその不安は、未だに残っている。
哀「いていいのよ。」
思わず、そう口にしてしまっていた。
少女は目を丸くして、こちらを見ている。
どうして、こんな子がそんな不安を抱えているのかは分からない。けれど、人見知りをする理由を、ゆっくりとだけれど、伝えてくれた彼女に何か言葉を返してあげなければと思った。
安い言葉では、余計に不安にさせてしまう。大丈夫、ではきっと彼女は納得しないだろう。
哀「貴方は、ここに居ていいのよ。自信をなくす必要なんてないわ。」
私の心に、ストンと落ちてきた言葉。あぁ、私もこう言われたかったのだろうか。
目の前の少女は、ポロポロと泣いていた。
哀「え、ちょ・・・楓さん?」
楓「え?・・・え。」
自分の頬に手を当て、驚いている少女。
楓「あれ?・・・ごめんなさい。どうして、」
ゴシゴシと目元を擦る少女。けれど、ポロポロとその涙は溢れて止まらない。
哀「・・・止める必要はないわよ。落ち着くまで、ゆっくり、自分のペースでいいわ。」
隣に座ると、こてん、と頭を肩に預けてくる。
楓「・・・ねぇ、哀ちゃん。」
哀「なに?」
楓「ありがとう。・・・泣いたの、凄く久しぶり。」
そう言って、目元を赤くして微笑んだ少女は、美しかった。