第6章 Robber of Lady
明美「・・・あのぅ。」
楓「なぁに?」
明美「貴方が、その、組織の人間なのは分かった。でも、フォーギヴンというコードネームは、聞いたことがないわ。それこそ・・・。」
大くんからも、聞いたことがない。
楓「諸星大・・・いえ、赤井秀一からも聞いたことがない?」
思っていることがこの少女には分かるのだろうか。顔を上げると、少女はクスクスと笑っていた。きっと、私の表情は驚きでいっぱいだったに違いない。
明美「どうして・・・。」
楓「そうね、シェリーからもこのコードネームが出ることはないでしょう。・・・ジンからは出るだろうけれど、彼に聞くのは良くないわ。銃口を向けられるのがオチだもの。」
明美「・・・そ、う。」
楓「ねぇ、なんて呼んだらいい?宮野さん?明美さん?それともフルネーム?それとも・・・広田さんの方がいいのかな。」
本気で、無邪気にそう聞いてくる少女。
明美「・・・なんでもいいわ。でも、お姉ちゃんとかの方が親近感があるんじゃないかしら。」
楓「そっか。それもそうね。・・・明美お姉ちゃん。うん、いい響き。」
ジュースを口にしながら、少女は嬉しそうにお姉ちゃん、と口にしていた。それを見ていたら、なんだか気を張り詰めている自分がおかしくて、笑みが零れる。
楓「強盗の実行日はいつ?」
明美「明日よ。」
楓「そう。・・・ね、なにかあれば、毛利探偵事務所ってところに行くといいわ。」
明美「探偵?・・・どうして、」
楓「きっと、その問題を解決してくれるから。」
ニコニコと微笑む少女。それにつられて、思わず笑ってしまう。
明美「分かったわ。毛利探偵事務所ね?」
楓「うん、そうだよ。」
まさか、本当にその事務所に出向かなければならなくなるだなんて、この時は考えてもなかった。