第6章 Robber of Lady
「こんにちは、お姉さん。」
公園で出会った少女。周りを見ても、親は見当たらなさそうだ。
「・・・貴方、ご両親は?いらっしゃらないの?」
「いないよ。お姉さんこそ、どうしてそんなに焦っているの?」
焦っている、のだろうか。子供からみてもわかるくらいに。
あぁ、焦っているだろう。私は、あの子を連れて組織から逃げることだけを考えている。頭の隅では、そんな事、出来るわけがないと思っているのに。
「・・・焦っている、のかもしれない。でも、私には必要なことなの。」
今思えば、どうしてそんな事を、こんな小さな子に呟いたのか、まったく分からない。自分でも分からない間に、切羽詰まっていたのかもしれないし、誰かに助けを求めたかったのかもしれない。
お願い。誰か。誰でもいい。
志保を、助けて。
「お姉さん。私が手助けしてあげようか。」
その言葉に、思わず顔を上げてしまった。
「・・・ダメよ。貴方はまだ小さい。ご両親のところへ帰りなさい。」
「それこそ、無理な提案だわ。宮野明美。」
宮野明美。その名に、背筋が凍る。今は、その名を使っていないのに。
「貴方は、一体・・・誰なの?」
誰、という質問に、少女は一瞬顔を曇らせた。けれど、ニコリと哂って、告げた。
「初めまして。私はフォーギヴン。組織の人間です。」
その時に吹いた風は、少女の金色の髪を靡かせた。
まるで、少女の表情を隠すかのように。