第5章 White Phantom thief
ダミーを打ち上げ、楓は即座に船内へ戻る。
楓「さて・・・どうしたものかしら。」
そこで通信が入る。
「今どこにいる!?」
楓「え?船内の・・・貴方が居そうな、機械室に向かって歩いているけれど、何かあったの?キッド。」
焦っている声。すると、角から見覚えのある青年が走ってくる。
「お、見っけ。」
楓「どうしたの?」
ひょいっと抱き上げられ、そのまま廊下を走るキッド。
キッド「坊主にしてやられてな!悪いが泳いで帰るぞ!」
楓「ウソ、本気?このワンピース安くないのだけれど。」
キッド「わりぃ。じゃあ残るか?」
楓「冗談でしょ?子供一人置いてくつもり?」
キッド「その割に、落ち着いてるな。」
ふと、私があまりにも落ち着いていることに違和感を感じたらしいキッド。目の前はちょうど、私が予約した部屋だ。
楓「ねぇキッド、これなーんだ。」
そう言って見せたモノに、キッドは目を丸くして、ため息をついた。
キッド「・・・お前、本当に怖い奴だな。」
楓「え?」
何事もなく船を降りる。ある程度船を離れてからキッドはこちらを見る。
キッド「どうやってゲットしたんだ?その招待状。」
楓「特に驚くようなことはしてないよ?」
キッド「その招待状を持ってるの事そのものに驚いてるんだが?」
楓「知り合いを通してゲットしたの。」
それ以上話すつもりはない、と判断してくれたのか、キッドは肩を竦めた。
キッド「まぁ、おかげで助かった。サンキュ。」
楓「こちらこそ。楽しかった。」
キッド「じゃ、次の作戦考える時は宜しくな。」
そう言って笑う青年に、思わず目を丸くする。
楓「いいの?」
キッド「今更何言ってんだよ?俺が、素性知ってる人間を逃がすと思うか?」
ニヒルに笑う青年に、思わず笑みが零れる。
楓「ありがとう。宜しくね。」
きっと、私は貴方を好きになるだろう。