第5章 White Phantom thief
楓「ぷはっ。」
「そんなに狭かったか?」
ケタケタと笑う男。少しばかり不貞腐れる。
楓「スーツケースに放り込まれるだなんて、思ってなかった。・・・その人に変装するの?キッド。」
キッド「あぁ。なんせ主催者だからな。」
パーティーに呼ばれるような服装で、スーツケースからいそいそと出てくる。シワを伸ばし、髪も整える。
キッド「いいのか?一人で居て怪しまれたりしないか?」
楓「そうなる前に、戻ってきてくれたら嬉しいな。」
キッド「・・・自由にやるくせに。」
楓「じゃあ、一つだけヒントをあげる。」
そう言って、少女はキッドに近寄った。キッドは当然のように少女に合わせてしゃがむ。
楓「あの人、模造品いっぱい用意してるんだよ。」
キッド「・・・だから親しい人、か。おっそろし。」
肩を竦めながら立ち上がる。
キッド「んじゃ、最悪の場合の時は宜しく。」
楓「はぁい。」
パーティー会場に入ると、人で溢れ返っていた。
楓「あらあら。」
キョロキョロと見渡し、目立たないところ、尚且つある程度視野が広い場所に移動してジュースを飲む。
楓「さて、君はどんな反応をするのかな。」
船は出航してしまっている。手元のジュースは既になくなってしまっていた。
楓「仕掛けは問題なし。・・・ダミーそのものにまだ気付かないのが、痛いところかな。」
ポンッ!!と、会場では聞きなれぬ音が鳴った。かと思えば、ポンポンポンッ!!と次々に何かが割れる音がする。
「真珠だ!真珠が爆発したぞ!!」
「冗談じゃありませんわ!こんなもの付けてられない!」
すぐに、会場は大騒ぎとなってしまった。その混乱に紛れ、楓は会場を後にした。