第5章 White Phantom thief
「それで、断ってしまったのですか?お嬢さん。」
少女「貴方からのお誘いを待ってるのよ?」
ふふふ、と笑う少女。
キッド「宜しいので?」
少女「構わないわ。普通に招待されるより、貴方との方が面白そうだもの。」
ニコニコと笑う少女にキッドは帽子を深く被り直す。
キッド「そのご様子では、私が誰に変装するのかもお分かりで?」
少女「そうね・・・。一番手っ取り早いのは身体検査をされなさそうな、主催者側。そのあとに、別の人間に主催者に親しい人間に成りすますのが無難、といったところかしら。」
当然のようにそう告げる少女に、キッドは思わず冷や汗が流れる。
キッド「なるほど。素晴らしい。」
少女「それで、私の情報は見つかったかしら?」
そう問われて、言葉が詰まった。どうやら、調べていることすらも知られていたらしい。
キッド「・・・根回しがお上手なことで。」
少女「きっと見つからないだろうと思ってね。」
ニコリと笑う少女にキッドは両腕を上げた。
キッド「降参だ。・・・お嬢さんのことだ。俺の情報は集め上げたんじゃないか?」
少女「そうしても良かったのだけれど、素性だけで止めたわ。普段は高校生をしている。・・・その情報だけで、私には十分だったから。」
キッド「俺を信用するかどうか、か?」
少女「うん。それに、貴方だって、何も見つけなかった訳じゃなさそうだもの。」
そう言って、こちらを見る少女は、確信めいていた。
キッド「あぁ。・・・そんな事まで、調べたのか。」
少女「というより、引っかかったが正解かしら。」
少女、いいや、少年の正体に辿り着くために調べたことだった。ついでに少女の分も、と思って調べたのだ。
キッド「それを踏まえた上で、もう一度聞いていいか。・・・名前を、教えてくれないか?」
少女はこちらを見て、哂った。
少女「私は――――――。」
夜は、まだまだ長い。