第5章 White Phantom thief
訳が分からない。この少女は、何者なのか。
少女は無表情のまま、こちらを見る。
「少年は、手強かった?」
あの子。ホテルの屋上で花火を打ち上げたあの江戸川コナンという少年のことだろうか。
「・・・あの少年と、お嬢さんはお知り合いで?」
「こちらが一方的に知っている顔見知り、と言ったところでしょうね。」
怪盗KID。とその少女は続けた。
キッド「・・・それで?私を見つけたと、彼に報告するのですか?」
「え?そんな事しないよ。」
少し首を傾げてそう告げた少女。一体なんだというのか。
少女「気になっただけ。あの暗号、とてもよく出来ていたから。」
まるで、遊び相手を見つけたかのような・・・いいや、これは、そんなものじゃない。
キッド「聡明なお嬢さん。夜はもう深い。こんなところにいては危ないですよ。」
少女「そうね。警察もうろついているようだし、見つかったら補導されるのかしら。」
考えていることが分からない。けれど、警察に顔見知りの人間がいる訳でもなさそうだ。
少女はこちらを見て、にこりと微笑んだ。
少女「けれど、ちょうど保護者もいることだし、大丈夫かしら。」
保護者。こちらを見てそう言った少女。後ろを見たけれど、誰もいない。もう一度少女を見ると、首を傾げる。
少女「ダメかしら。」
キッド「・・・見ず知らずの人間を、そう易々と信用してはなりませんよ。お嬢さん。」
少女「貴方なら、そう言ってくれると思ったから。・・・きっと貴方は、見ず知らずの、逃走ルートを知っていた私を疑うのだろうけれど。」
その、綺麗な水色の瞳に思わず引き込まれそうになる。
少女「貴方に、会ってみたかっただけなの。」
その笑顔は、何も考えていない、素直な笑顔だった。
肩をすくめ、帽子を外す。
キッド「お嬢さん、名前は?」
少女「私?私は・・・いえ、やめましょう。きっと、ろくでもないことに巻き込まれるに決まっているわ。」
何かを考えたあとにそう答えた少女。どうやら、教えてくれないようだ。
少女「そのお嬢さんが、今はとても心地がいい。だから、そのままがいい。」
キッド「・・・なるほど。わかりましたよ、お嬢さん。」
そして、少女は爆弾を投下する。
少女「次の場所、私も行きたいわ。」