第4章 Black Liquor
ベ「この子がフォーギヴンよ。」
楓「・・・こんにち、は。」
指定されたホテルのレストランで待っていると、指定してきた人物が姿を見せた。その後ろから、ひょっこりと顔を見せたのは、予想していた以上に幼い子供だった。
ゴシックワンピースを身に纏い、傷を知らない金髪のロングヘア。少し鋭いその目は、綺麗な水色をしていた。
別の仲間に会わせる、と聞いていたけれど。
キ「子供だなんて、聞いていないわ。」
ベ「あら、貴方子供嫌いだったかしら。」
キ「別に嫌いじゃないわ。むしろ、貴方の方こそ、」
ベ「この子は優秀なの。」
ベルモットの隣の席に座る少女は、外を見つめてオレンジジュースを口に含んでいた。
キ「そうよね。ネーム持ちが優秀じゃないわけないわ。・・・この子とペアを組むのかしら?」
ベ「暫く日本に滞在予定だから、邪魔をしないように釘を刺しておこうと思ったのよ。」
キ「そんな大人げないこと、しないわよ。・・・まぁ、彼女の仕事内容によるわ。」
ベ「そうね・・・簡単に言ってしまえば、パソコンね。」
キ「パソコン?情報屋ということ?」
ベ「彼女、うちのメインサーバーなのよ。」
その言葉に、思わず目を丸くする。こんな小さな子が、組織の情報を持っている、と。しかも、末端ではなく、組織の中枢を担っている。
キ「・・・そんな子、会わせて良かったの?というより、外に出して良いの?」
ベ「今は休暇中だもの。それに、彼女の口はとっても堅いのよ。」
キ「そう。」
ベ「ほら、フォーギヴン。」
楓「あ、ぅ、」
ベルモットがオレンジジュースを取り上げると、少しだけ膨れた少女。ただ、それはあまりにも一瞬だった。一般人では見逃すほどの瞬間。彼女はこちらを見て、無表情なまま呟いた。
楓「よろしく、お願いします・・・。」
キ「えぇ、こちらこそ。」
それから軽く食事をして別れる。
楓「またね、キール。」
キ「えぇ、また。」
少し慣れたように、おずおずとこちらへ寄ってきた少女に、思わず手を伸ばしそうになって辞めた。
タクシーで去っていくのを見つめたまま、出会った少女を思い返す。
キ「・・・フォーギヴン、ね。」