第16章 Unknown
保険医「灰原さん?」
ハッとして我に返る。
哀「あ・・・すみません。」
「貴女が灰原さんね?うちの子がご迷惑おかけしてごめんなさい。」
そう喋る女性。よく見れば茶色の髪で、お姉ちゃんより歳がいっていそうだし、顔は似ていなかった。
哀「あ・・・灰原 哀です。いつもお世話になってます。」
「いいえ、こちらこそ。楓の母です。この子から話はよく聞いているわ。」
そう言って微笑む女性。母親であるのなら、見た目と恐らく実年齢が合うだろう。
なんだろう、この安心感は。初めて会ったのに。
母「それじゃあ、このまま病院に連れて行きますね。お世話おかけしました。」
保険医「いいえ、お大事になさってください。」
楓さんを抱き上げて深々と頭を下げる女性。こちらを見てもう一度頭を下げて去っていった。
保険医「ほら、灰原さんも教室に戻りなさい。付き添ってくれてありがとう。」
哀「ううん・・・全然。友達だもの。」
教室に戻りながら、保健室に迎えに来た女性を思い返す。
哀「・・・きっと・・。」
声も全然違った。顔だって、きっと年齢だって全然違う。なのに、どうして。
哀「・・・お姉ちゃんが年を取ったら、きっとあんな風になったんだろうな・・。」
どうして、こう思ってしまうのだろう。