第16章 Unknown
江戸川くんが保健室を去り、保険医も書類を取ってくる、と席を外してしまった。
哀「・・・。」
眠っている少女の顔を見ると、少し汗をかいている。
哀「嫌な夢でも、見ているのかしら・・・。」
少女の汗を拭おうと、ハンカチを持った瞬間だった。
楓「・・・ぉ・・。」
哀「?楓さん??」
眉間のシワが深くなった。
楓「おぃて・・いかないで・・・。」
ツゥ・・・と涙が零れていく。
哀「・・・大丈夫よ、ここにいるわ。」
汗をぬぐい、涙をぬぐうと少女の眉間のシワはなくなり、スゥ、スゥ、と寝息だけが聞こえる。
哀「・・・過去に、何かあったのかしら。」
それとも、ただ悪夢を見て誰かに置いていかれそうになっているのだろうか。
暫くしてガララッと開いた扉。そちらを見れば、保険医と女性が立っていた。
保険医「灰原さん、保護者の方が来たから教室に戻りましょうか。」
目が離せなかった。
保険医「?灰原さん??」
「ありがとう、この子の側に居てくれて。」
雰囲気が、笑ったその笑顔が、
哀「お・・ね・・・・。」
お姉ちゃんに・・・宮野 明美に、似ていた。