第15章 They are police.
電話が鳴っている。表示は非通知。
「・・・。」
出るかどうか悩んで、出ることにした。
「もしもし。」
「こんばんは、バーボン。眠っていた?」
機械じみた声。変成器を通しているのだろう。
安室「寝ていたら、電話に出ていないでしょう?」
「そうでしょうか?きっと貴方は目を覚まして電話に出てくれると思っているけれど。」
安室「それで、何の用でしょうか?・・・フォーギヴン。」
そう告げれば、電話の向こうは一瞬静かになった。
「他の人間である可能性は?」
安室「他の組織の連中は非通知にしても、その声で連絡してくることはありませんよ。自身の声で連絡してきますよ。」
「なるほど。一理あります。」
年齢はおろか、性別すらも分からない声。やはり自身のデータを晒すことはしないらしい。
「こうやって顔合わせしてない人間相手に電話するの初めてなんです。いつもはメールだけで済ませたり、気分で会ってみたりはするんですけれどね。」
安室「・・・へぇ、そうなんですか。ベルモットはそれを知ってるんですか?」
「知らないと思いますよ。ああ、ベルモットに報告するんですか?構いませんよ。」
安室「困ることはない、と?」
「えぇ。私は困ることなんてありません。」
含みのある言い方に、今度はこちらが黙ってしまう。
安室「僕は困ることがある、と?」
「困りはしないでしょうけど、彼女の相棒を突き付けられるかもしれないですね。」
安室「・・・なるほど。それは恐ろしい。その相棒を怒らせない方法をお教え頂いても?」
「では一つ、仕事をお願いしましょうか。」
安室「仕事、ですか?」
「えぇ、簡単な仕事ですよ。ただ、ベルモットに頼む必要がありますけど。」
そう言われ、告げられた仕事に思わず目を丸くする。
安室「良いんですか?貴方の情報を盗み取るかもしれませんよ?」
「構いませんよ?大した情報などありはしませんから。」
安室「・・・近日中に僕がベルモットと会うことはご存じで?」
そう問えば、電話の向こうはクスッと笑って告げた。
「勿論、存じておりますよ。」