第1章 ライオンの王子様
正門が見えてくるとそこに人影も見えてきて。
遠くからでもわかるあの金髪オールバック姿に繋にぃだと確信すると走っていって思い切り飛びつく。
「っおわ!だから、いきなり抱き付くなっつってんだろ!」
「へへ、だって繋にぃに抱き付きたいんだもん」
「はぁ…もう勝手にしろ。帰るぞ」
「うん!お待たせ繋にぃ。待っててくれてありがと!」
ハッキリと大きな溜め息をついた繋にぃが歩き出したから慌てて隣を歩く。
チラチラッと繋にぃを見上げてみるけどやっぱりカッコイイ。なんて幸せな時間なんだろう。
「部活の連中にはちゃんと言えたのか?」
「うん、ちょうど部室行った時にご心配おかけしましたって謝っといた。何事もなくて良かったって言ってくれたよ」
「そうか、いい奴らで良かったな」
部室でのことを繋にぃに報告すると、ポンポンと優しく頭を撫でてくれて。嬉しさに足取りも軽くなる。
「ところで…よ」
「ん?繋にぃどうしたの?」
「あー…ほら、1年の眼鏡かけた…」
「眼鏡…月島くん?」
「あーそう、そいつ。お前から見てどんな奴だ?」
ガシガシと頭を掻きながら聞いてくる繋にぃに疑問を感じながらも月島くんを思い出してみる。
「バレーに関してはあんまり熱を感じないかな…良くも悪くも冷めてる。頭は良いし、体育を見てる限り運動神経も良いみたいだし…女の子からの人気はあるかな…あ!」
繋にぃから月島くんのこと聞いてくるなんてビックリだけど。まぁコーチやるんだしね、部員のこと知りたいよね。
月島くんかぁ…って考えてみると表面的なことしか知らなくて、それで大丈夫かなぁって繋にぃを見れば何やら考えてるようで。こんな感じかなと締め括ろうとした時に先程の出来事を思い出して思わず大きな声を出してしまうと繋にぃがビクッとして。
「いきなりでけぇ声出すんじゃねぇ!」
「ごめっ…!ちょっと思い出したことがあって」
「あ?何だよ」
「さっきね、部室の前で会ったの。大丈夫なのって心配してくれたからめっちゃいい人!って思ったんだけど、橘さんって頑丈そうだよねとか面白かったとか言ったんだよ!?」
酷くない!?って繋にぃに詰め寄ると、肩を震わせて笑っていて。
え、繋にぃそこ笑うとこ?
あまりにも腹が立ったので半ば八つ当たりだけど繋にぃの背中を思い切り叩いてやった。