第1章 ライオンの王子様
「さっきの、凄い綺麗に直撃してたけど…大丈夫なの?」
「あー…あはは、ついさっき目が覚めたとこ。ごめんね心配かけて」
「そ。まァ、橘さん頑丈そうだしね。あんな風にボールが当たるとこ初めて見たから面白かったし」
「頑丈そうって何!?」
月島くん心配してくれたのかなって嬉しくなったのに、頑丈そうだとか面白かったとか性格ひん曲がってんじゃない?
ほんとにクスクス笑ってるし失礼!
もういい、さっさと帰ろ。
「ところでさ、チョット聞きたいんだけど」
「…何?」
「あの人…新しいコーチ。橘さんの彼氏とかだったりするわけ?」
「かかかか彼氏!!?ち、違う!!ただの幼馴染みってだけ!」
「ふぅん。君、顔真っ赤…ホント分かり易すぎだよね。じゃあ、僕行くから。気を付けて帰んなよ」
「へ、あっ…ありがとう月島くんも!」
月島くん何が言いたかったのだろう…?
もしかして繋にぃと私が恋人同士にでも見えたのだろうか。
そうだとしたら嬉しすぎてまたニヤけてしまう。
ハッ、そうだ繋にぃ待たせてたんだった!
ボーッとしてる場合じゃない、急がなきゃ。
すぐに部室に入ればまだ先輩たちも残っていて、私が扉を開くと一斉に駆け寄ってきてくれて。
「裕香ちゃん大丈夫!?」
「ごめん私のせいで…!」
「だ、大丈夫です!すみませんご心配をおかけしました!」
「とりあえず、怪我はないのね?頭痛かったりとかは?」
「起きた直後はクラクラしましたけど今はもう平気です!すみません私…っ」
「はぁー、良かったぁ!」
先輩たちからの質問攻めに謝っていると、私が無事であることがわかった途端抱き付かれて思わずフラついて。
こんな心配かけちゃってたんだなって反省する気持ちと、心配してくれてたんだって嬉しい気持ちが混ざり合って何だか泣けてきちゃって。
「もう、泣かないの〜!」
「す、すみませっ…」
先輩たちにわしゃわしゃと頭を撫でられて、抱き締めてもらってこの部活に入って良かったと心から思った。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ!」
「はい!ありがとうございました!」
「裕香ちゃんまた明日ね!」
制服に着替えて先輩たちに頭を下げてから手を振ると繋にぃが待っているだろう正門へと急ぐ。