第1章 ライオンの王子様
叩いたところが悪かったのか、私の力が強かったのかゲホゲホとむせる繋にぃの背中を慌ててさする。
「だ、大丈夫?繋にぃ」
「お前、力強くなったんじゃねぇか?」
「そりゃね、もう16歳だもん。私もう結婚出来るんだよ!?」
「結婚ってな…相手が居ねぇだろうが」
「じゃあ繋にぃが」
「お子ちゃまはいらねぇよ。ほら、家着いたからちゃんと飯食って早く寝ろよ?」
絶好のチャンスだと思ったのに…!私がどんだけ大人の女になったか話す前にタイムリミットがきてしまった。
そりゃね、すんなり貰ってやるよなんて言ってもらえないのはわかってたけどさ!
そんな即答しなくても良くない?
不満そうな顔をしてるのがわかったのか、繋にぃは困ったように眉を下げてからまた頭をポンポンとして「じゃあな」と手を挙げて帰ってしまった。その後ろ姿に「送ってくれてありがと」と言えば私は家に入る。
落ち込んでなんかいられない!繋にぃに言われたこと、ちゃんとしなきゃ。運動は体作りが基本!しっかり食べてちゃんと寝る。これは、私が小学生の頃見学させてもらった時におじいちゃん…烏養前監督から教えてもらった大事なこと。
お風呂に入ってサッパリして、何気なくスマホを確認すれば道宮先輩から連絡が入っていることに気付いて。
何だろうって確認してみると、ちゃんと家に帰れたのかということと体調に変化ないかということだった。何て優しい先輩なんだろう…!
感動して涙目になりながらもすぐに返事を送る。何通かのやり取りがあって、話題はだんだんと好きな人のことに。
「へぇ…道宮先輩も好きな人居るんだ!どんな人なんだろう…きっと優しくてカッコイイんだろうな」
先輩の話を聞いていると好きな人が男子バレー部に居るってことがわかってきて…
そうとなったら明日の部活にでもどの人か確認しちゃおうかな。
続いて先輩からの質問が始まり話題は私の恋バナに。年上だから恋愛対象に見てもらえない悩みを話すと、先輩からも好きな人が鈍感過ぎてどうしたら良いのかわからないって返事がきて。
恋のことで悩んでるのは私だけじゃないんだってちょっとホッとした…
先輩と話している時間は楽しくて、お互いに好きな人の愚痴を言っていたらいつの間にか夜遅くなってしまったが、一気に道宮先輩との距離が縮まった気がして嬉しくなった。