第1章 ライオンの王子様
ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れない部屋で。なんだかとても懐かしい夢を見た気がする。
ここが保健室であることに気付くのに時間はかからなかった。辺りを見ればすぐ側には繋にぃが居て。
私が目を覚ましたことに気付いた繋にぃは昔と同じ、優しい私が大好きな顔で。
「裕香!良かった…目ぇ覚めたか」
「繋にぃ…私…っ!」
「おい、まだ起きんな。無理すんじゃねぇ」
私が何故保健室で寝ていたのか思い出して慌てて起き上がろうとすればまだ頭がクラクラして。そっと繋にぃに制されれば再びベッドに横になる。
目が覚めて一番に繋にぃが見れるなんて幸せ、と口元が緩んだが次第にどんどん繋にぃの顔が怒りに歪められていく。
あ、やばい…こういう時は…そうだ先に謝っておこう!
「繋にぃ…あの」
「ったくバカかお前は!いつもちゃんと周りを見ろって言ってんだろ!」
「ごめんなさい…だって繋にぃがバレーしてるの、久しぶりに見れたから」
「はぁ〜…お前は…」
ピシャリと怒られてしゅんとしていれば、溜め息をついた繋にぃに頭を撫でられる。
あぁ、この手だ…とても安心する大好きな繋にぃの手。
「繋にぃ、部活って…」
「あー、もうそろそろ終わる時間じゃねぇか?」
「うぅ…ごめん」
「まァいいか、着替えてこいよ。もう遅えし送ってく」
「繋にぃ…うん!待っててすぐ支度する!」
目ぇ覚めたこと先生に伝えてくるからと行ってしまった繋にぃの背中に「ありがとう」と言えば、振り返ることはなかったが手を挙げてくれた。
未だに少し頭が痛いけど…
繋にぃを待たせるわけにはいかないと思って起き上がると保健室から出て部室へと急ぐ。
色んな人に心配かけちゃったけど…
繋にぃずっと側についててくれたんだ…
どうしよう、嬉しくてニヤけちゃう。
1人で歩いてるのにニヤニヤしてるなんて変な人だって思われても嫌だし、何とかして頬の緩みを引き締めようと思ってるんだけどどうもうまくいかない。
「ねぇ、何ニヤニヤしてるの?あの人?」
「わぁっ!つ、月島くん…!あ、いや、その」
「別に隠さなくても良いんじゃない?てか分かり易すぎデショ」
ちょうど男子バレー部の部室付近を歩いていた時に不意に声を掛けられてビクッとする。
ニヤついてる姿をバッチリ見られたみたいで恥ずかしさに頬が熱くなる。