第1章 ライオンの王子様
ふわふわした感覚だ…これは夢?
「おい何やってんだ!」
「わ、逃げろ!」
「ったく懲りねえな…裕香大丈夫か?」
あれ、昔の繋にぃだ…
そう、繋にぃはこうやっていつも男の子たちに虐められてた私を助けてくれて、泣いてる私をおんぶして家まで送ってくれた。
小学生の私はその大きな背中にドキドキして、繋にぃの匂いが大好きで、ずっと顔を埋めてた。
虐められたのは毎日じゃなかったけど、私が虐められていると必ず繋にぃは駆け付けてくれた…私のヒーロー。
だから、虐められていたことは凄く嫌だったけど繋にぃが来てくれるって思えば耐えられた。
「あれ?烏養?」
「その子、怪我してんじゃん。ちょっとウチ寄ってけよ」
「あー、俺ん家近所の子。悪いな嶋田頼むわ」
ある日、そんな帰り道に声を掛けてくれたのは嶋田さんとタッキー。話を聞いてくれて、擦り傷の手当てまでしてくれた。
「んだよそれ。ふざけんなガキ…!俺も助けてやっから、任せろよ」
「あ、ありがとうございます…」
「いいって、俺らにも敬語使うことないよ」
「こいつら、俺と同じ烏野のバレー部なんだ」
「裕香ちゃん、今度部活来てみるか?」
「え、いいの?」
「「こいつが何とかする」」
「あぁ!?じいさんに言えって!?」
「当たり前だろ?俺らが言えるわけないし」
この3人のやり取りは私にとって新鮮で、繋にぃってこんな風に笑うんだって思うと私までおかしくなっちきちゃって。
私が笑うとみんなこっちを見るから、ごめんなさいって謝ればニコッとしてくれて。
「違う違う、笑った顔可愛いなって思って」
「かわ、いい…?」
「おい、裕香はまだ小学生だぞ?」
「ンなことはわかってるよ!あれれ〜烏養クン嫉妬ですかァ?」
「うっせぇな!んなわけねーだろ!小学生に手ぇ出したら犯罪だろ」
「まぁとにかく、俺らも裕香ちゃん見かけたら助けに行くからさ」
「あ…ありがとう…!」
「良かったな、裕香」
2人からの言葉が嬉しくてお礼を言えば、大きな手で頭を撫でられて。見上げてみれば繋にぃが優しく微笑んでくれていて。
繋にぃから目が離せなくなって、みんなに聞こえちゃうんじゃないかってくらい心臓が煩くて。
まるで王子様に見えて…
私の王子様は繋にぃなんだってわかったの。