第1章 ライオンの王子様
「うぉあっ!?おい、裕香何すんだよ危ねえだろ!」
「えへへ、早く繋にぃに会いたかったんだもん」
「お前な、いい加減に…」
「私は本気だよ。からかってるわけじゃない。本気で繋にぃのこと」
遮られるようにお店の扉が開いてお客さんが来ると、再び仕事モードになった繋にぃは腕を振り解いてレジの方へ。
仕方なく店の奥にある椅子に座って、仕事をしている繋にぃのことを見つめる。
繋にぃこと、烏養繋心は私の幼馴染み。
家が近所で小さい頃からずっと一緒に居てくれた人で…私の想い人。
「はぁ…今日もカッコイイ…」
「あら、裕香ちゃんいらっしゃい。また繋心に会いに来てくれたの?」
「あ、おばさん!こんにちは。うん!学校終わってすぐに来たの」
「あらあら、あの子も隅におけないねえ。相変わらずもの好きね」
「そこうるせぇ!仕事の邪魔だ!」
奥から出てきたおばさんと話していると、いつの間にか接客を終えた繋にぃが目の前に居て。
眉間にはガッツリ皺が。怒ってるようなそんな顔もカッコイイって思うのは恋は盲目ってやつなのかな。
「はぁ…もう勝手にしろ」
「言われなくてもそうしますー。ねえ繋にぃ、また今日も武田先生から言われちゃったんだけど」
「…あの先生な…」
「武田先生凄くいい先生だよ?それに凄い子居るし」
「あ?凄い子?」
「うん、北川第一の天才セッターと…小さくて早い子。あとね、クラスメイトの月島くんと山口くん。2人とも身長高いんだよ!」
商品の補充をしながら私の話を聞いていた繋にぃの手が止まった。興味出てきたかな?
男子バレー部の顧問武田先生に私が繋にぃの幼馴染みだって知られてからと言うものの、クラスまできて繋にぃにコーチを引き受けてくれるように私からも頼んで欲しいって頭下げられちゃったんだよね。
「…ところでお前の方はどうなんだ?女子バレー部に入ったんだろ?」
「もちろん!先輩たち優しいし大丈夫」
「そりゃ良かったな。ほら高校生は早く帰って宿題でもやっとけ」
「えー?今日繋にぃの家に」
「ダメに決まってんだろ!ほら帰った帰った」
強引に追い出されるように店から出されると問答無用に扉を閉められて。
コーチの話もうやむやになったし、今日も繋にぃはちゃんと私のこと見てくれなかった…
はぁ…繋にぃのくせに実に難攻不落だ…