第1章 ライオンの王子様
「おはよー月島くん山口くん」
「あ、おはよ橘さん」
「おはよ」
それから数週間が経って、だいぶクラスメイトの顔も覚えてきて男子バレー部のみんなとも挨拶をする程度にまでは仲良くなってきた。
月島くんと普通に話せるのが凄いって日向くんからは言われるけど。まぁ、時々イラッとすることもあるけどね…でも何だかんだで優しかったりするんだよね。
「橘さん月島くん先輩が呼んでるよー」
「ん?先輩…?」
「え、何…」
不意にクラスメイトから呼ばれると月島くんと顔を合わせ、先輩から呼び出される理由が見当たらず首を傾げる。
どうやらクラスに来ているようで、待たせるのは悪いと思って急いでクラスから出るとそこに居たのは道宮先輩と…男子バレー部の部長さん。名前なんだっけ…あ、澤村先輩だ。あれ、この人って確か…
心なしか道宮先輩がテンパってる。
この前話してくれた好きな人って…ふーん、なるほどね。やばい、ニヤける…!
「ごめんな呼び出したりして」
「いえ!大丈夫です」
「俺から説明させてもらうけど、月島と橘さんには1年の連絡係を頼みたくてな」
「連絡係…ですか?」
「そういうの僕より山口の方が…」
「そう言うなって。難しいことじゃないからさ。俺や道宮、コーチや先生からの連絡を他の1年に回す。それだけだから」
「それにそんな頻繁にあるわけじゃないし…」
いきなりのことに私も月島くんも戸惑いを隠せなくて、そんな様子を見て澤村先輩は困ったように眉を下げた。
道宮先輩からもお願いされてしまっては断る理由はない。
「わかりました。月島くんも、良いよね?」
「はぁ…わかりました」
「ありがとな。夏には男女で合同合宿あるからお互いに連絡先交換しておけよ」
「男女合同の、合宿…!?」
「何ですかソレ、聞いてませんけど」
「まぁ、また詳細は後日な。じゃあ道宮行くか」
「あ、う、うんっ!じゃあまた部活でね!」
澤村先輩に名前を呼ばれた道宮先輩は頬を赤くさせながら手を振って教室へ戻っていった。
道宮先輩可愛すぎでしょ…!
「ねえ、何ニヤニヤしてんの?」
「えっ、な、何でもないこっちの話!月島くん、連絡先教えてもらっていい?」
道宮先輩の秘密を喋るわけにはいかない!
何とか誤魔化すように月島くんと連絡先を交換した。