第8章 雨宿りはお好き?
それから、雨足が弱くなるまで私たちはずっと無言だった。
うっかり口を開いたら要らないことまで言っちゃいそうだったから、私からは先生に話しかけなかった。
「あ……先生、そろそろ…」
ふと空を見上げ、口を開いたその時だった。
「ああ!!!いたいた〜!!舞〜っ!!」
「善逸!?」
バシャバシャと雨水を蹴飛ばしながらこちらへ駆け寄って来たのは、傘を差した善逸だった。
空いている方の手にはもう一本の傘。紫色だから多分私の。
「遅いからさあ、俺心配したよォ!!!早く帰ろ!!」
ぎゅっと私を抱き締める善逸はいつもの調子。だけど、私の隣にいる先生を、まるで見えていないみたいに話を進めていく。
「あっ、善逸ちょっと待って……、不死川先生、これ、私の傘ですけど使ってください。」
善逸に手を引っ張られながらも先生に傘を渡すと、先生は"あァ…"と、何だか気の抜けたような返事をした。
私は善逸の傘に入り、そのまま家へと帰った……。