第8章 雨宿りはお好き?
不死川side
突然舞を迎えに来たアイツは、終始俺を睨み付けながら舞と帰って行った。
幼馴染みとは聞いていたが、まさかあれほど舞に惚れてるやつだとは思わなかった……。
(俺も大人気無ェな……。生徒にすら嫉妬するなんざ……。)
やはり自分は手を引くべきだろうか。と、考えていたその矢先……。
「先生。」
ふと、後ろから声が聞こえた。
(俺を追いかけて来たのか。)
さっき聞いたばかりのその声は、舞と話す時のような猫なで声とは違い、相手を威圧するような声だった。
振り返ろうとすれば、そのままで結構です。と返ってくる。
「……どうした。」
「……舞を好きなのはアンタらだけじゃない。"俺たち"だって舞の事が好きなんだ。」
「……は?」
思わず聞き返した。
それでも我妻は俺のことなど気にせず言葉を続けていく。
「自分達だけが主役って思わないでくださいね。俺たちだって"何十年も前"から彼女を愛してる。」
それは前世の事だろうか。
俺たちって誰だ?我妻だけじゃないのか。
様々な思考が巡り、俺は堪らず振り返った。
「……居ねぇ。」
俺が振り返った先には誰も居らず、唯々雨が降りつけるだけだった。
(逃げ足の速ェこった……)
どこか遠くから落雷の轟音が聞こえた。