第9章 夏休み:前編
来たる夏休み。
私たち美術部は、冷房の効いた美術室で優雅に談笑していた。
「いつの時代もカルピスは美味しいですね。キャッチコピーは……確か"初恋の味"でしたっけ」
「今は"カラダにピース"だよ。年齢層バレんぞ」
氷で冷えたカルピスを飲み干す宇髄先生は、満足そうに息を吐いた。
運動部は大会練習。
吹奏楽部はコンクール練習。
美術部も本来絵画コンクールに応募するために切磋琢磨するはずだったけれど、如何せん暇な私はとっくの昔に終わらせ、手早く応募も済ませた。
だから今はこうして、涼しい部室でのんびりとカルピスを飲みながら談笑していたのだ。
何かする訳でも無く、宇髄先生とただのんびりと過ごす時間はとても心地よい。
だが、そんな時間も束の間。
宇髄先生が私に寄りかかりながらうとうとしていた頃、美術室の扉は勢いよく開かれた。
「たっ、助けてくれぇっ!!!」