第8章 雨宿りはお好き?
渡されたタオルで濡れた頭や手を拭いていると、じっと舞に凝視されていることに気がつく。
「……なんだよ。」
まだ寝癖がついていたのだろうか。
そう思ったけれど、俺が声をかけた事に肩を震わせて驚いた舞を見て、そうでは無いことに気づく。
「おい、どうした?」
「…その、……。別に…何でもないですよ。」
「そうかァ……」
舞は何か言いたそうに瞳を揺るがしたが、俺は敢えて聞かなかった。
その間にも、雨はより一層強さを増し、瓦屋根には大粒の雨が忙しく打ち付ける。
「……アイツらとは……どうなんだよ。」
何となく気まずい雰囲気の中、俺はボソリと呟いた。
「…キスしたのは、先生が初めてです……。」
「……は?」
思いがけなかった舞の返事に、俺は思わず間抜けな声をあげた。
俺が初めてだァ?
宇髄とかもっとなんかヤりそうだろォ。
煉獄だって手ェ引いてるっつったってずっと見てるだけなのかよ。
冨岡は………………知らねェ…。
「……はァ……。」
情けねぇやらなんやらで俺の口からは大きなため息が漏れた。
俺が最初に手を出すなんて思わなかった……。
てっきり俺より先に進んでる奴がいるのだとばかり……。