第6章 美術教師の目論見※
保健室の扉を開いた私が見たもの。それは、保健室のソファーでくつろぐ宇髄先生だった。
「さっきお前が伊之助に頭突きされてんの見たからな。今日は珠世先生も居ねぇから、代わりに来てやったんだよ。」
「あぁ……はい、」
この時、頭の中で嫌な予感がした。
それもそのはず。1週間程前に"お前を惚れさせる"という宣言を受け取ったばかりなのだから。
油断はならぬと、最初は身構えていたのに。
「湿布貼ってやるから。こっち来い」
宇髄先生が案外優しく、"健全"に手当てしてくれたから最後は完全に警戒心を解いてしまっていた。
「じゃあ宇髄先生、ありがとうございました。」
腰の痛みも少なくなった私は、次の授業を受けるべく保健室の扉を開けようとした…その瞬間だった。
「なあ、待てよ。」
ドンッ、と大きな音がしたと思えば、頭の横には先生の掌があった。
後ろから包囲され、完全に逃げられない体制に変わる。
「あ、の……!!宇髄先生、」
足の間には又彼の足。自身の体の両サイドには逞しい腕。
自分のより30cm以上背丈の高い男に、私は軽々と捕まってしまった。