第4章 恋に落ちる音がした
唇と唇が触れる直前、誰かが宿直室の扉を開いたのだ。
扉の向こうから姿を表したのは、同僚の不死川。
アイツもまた舞の事を"前"から好いていて、舞に狙いを定めている者の1人だ。
「……は、」
不死川は突然起こった事態に混乱しているようで、口を鯉のようにパクパクとさせていた。
バタバタと暴れる舞をガッチリホールドしながら黙って不死川にピースサインをすると、アイツは我に返ったように声を上げた。
「テメェ……抜け駆けたァ良い度胸してんなァ??」
持っていた書類を机の上に勢い良く叩きつけた不死川は、俺たちに向かって鬼の形相でズカズカと歩み寄った。
「舞、ちょっとコイツ借りるぞォ……職員室にゃ煉獄も居る。俺とアイツでお前に特別補習だァ……」
「えっ??ちょ、」
俺の髪をぐっと掴んだ不死川は、そのまま力尽くで俺を引き摺った。
「痛てーよッ!!!!」
「あ"ぁ?もういっぺん言ってみろォ」
「不死川さん?……あっ」
俺の腕から離れた舞は、不死川の事を"さん"付けで呼んだ。
普段の不死川なら拳骨カマしたり"先生って呼べェ"つって注意すんのに、今日は舞の頭を撫でるだけ。
コイツ……早速舞を堕とそうと企んでやがる……。
「オラァ、さっさと行くぞォ」
「痛っ!?ま、舞!体操着乾いたら帰っていいから!!Tシャツはそこら辺置いとけーッ!!!」
「は、はいっ」
引き摺られる背後で舞の返事が聞こえた。
それにしても……これ、不死川まじギレじゃねぇか……煉獄もいるから……
俺、今日生きて帰れるのか……??