第4章 恋に落ちる音がした
ただ、幸いな事に今日は土曜。ここは宿直室。
今なら誰も来ないし、音がしても誰も気づかない。
(喰っちまうか……??)
舞は案外単純な性格だ。このまま堕とせるかもしれない。
「俺の事、嫌いになったか?」
「い、いや……あの、なってない…です」
耳元でそう囁けば、舞の鼓動はみるみるうちに速くなって顔も紅潮していく。
そうだ、そのまま彼女に"好き"と言わせろ。
言わせてしまえばこちらのもの。
今でこそ好きじゃなくとも、口に出させる事で嫌でも俺の事を意識し始める。
「本当に?」
「はい…」
後ろから抱きしめると、彼女はビクッと驚いたように震えた。
(アイツはずっと、こんなにも愛い奴を傍に置いていたのか。)
心のどこかでそう思った。
だが、もう今は違う。
今は、今はもう………………
舞の顎に指を添えてそっとこちらを向かせる。
そしてそのまま唇を______
…奪う筈だった。