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『鬼滅の刃』夢の戯れ

第5章 残酷な世界の中で。『竈門炭治郎』「前編」




でもそんなの知るもんか。


こちとら百年振りの再会なんだからこんな時くらい騒ぐのは許してほしい。

「炭治郎、お前ちょっとおっさんぽい音がするよ」

「そういう善逸もおじさんの匂いが混じってるぞ」

「匂いはやめてくんない!?30歳の一番デリケートな問題なんだよ加齢臭的なやつはさあ!」

「す、すまない」

「まあでもしょうがないのかな…お互いあの時より老けてるもんなあ」

「そうだな。俺ももう40歳になったし」

「40!?10歳も年上なのかよ!?お前それは流石に童顔すぎだろ!」

「そうか?うーん、自分じゃよく分からないんだが…でもそれはよく言われるな」

「何だそれ嫌味かよ!?」

「そういう訳じゃ……はははっ、なんか凄く懐かしいな、この感じ」


また音が揺れた。炭治郎の反応からすると、こいつも俺と同じように誰にも会えてなかったんだろう。炭治郎の目の水分がさっきより増えてる。炭治郎はよく泣く奴だったし、そういうところも変わってないんだなってなんだか安心した。

40年もこの広い世界でひとりぼっちの感覚なんて、きっとすごく寂しかったんだろう。


やっと止まりそうな涙を拭った時、


視界の端で何かがキラリと光った。光の方を見てみると炭治郎の左手の薬指に指輪がしてあるのが見えた。


(…え)



は?え?左手の、薬指?



「ちょっ、ちょっと待てよおま、エ゛ッ!?嘘だろ炭治郎結婚してんの!?はあああああ!?ふざけんなよ!?」

「あ…善逸これは、」

「いや40歳なら結婚くらいしててもおかしくないけどさあ!?全然ひとりぼっちじゃねーじゃん!?何なの!?俺の同情を返せよ!俺はこの30年間ずぅーーっとひとりぼっちでしたけど!?いやまあ両親にも友達にも恵まれたとは思うしすっげえ感謝もしてるけどさ!?でも彼女いない歴イコール年齢なんだよこっちは!!そういうことには繊細なの!!」

「落ち着け善逸、話を聞いてくれ、」


襟首に掴みかかってグラグラと炭治郎の体を揺さぶっていると、炭治郎の不自然な静止に違和感があって動かなくなった炭治郎の視線の先を見てみたら、

離れたところから俺と同じか少し上くらいの歳の女の人がこっちに歩いてくるのが見えた。顔はよく見えないけど、聞き覚えのある音がした。



優しくて真っ直ぐであたたかい、華ちゃんの音だ。


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