第13章 Dreamcatcher 【??×社会人夢主】
私たちは他愛ないおしゃべりをし、恋人のように指を絡めたり、肩に寄りかかったりした。
どうしてか全然抵抗がなかったし、彼女も耳を赤らめ、ぎこちない仕草で私にふれてくれる。
奇妙な関係だとわかっていた。
ときどきとおくを見るような彼女の目線について、訊いてもこたえてくれないこともわかっていた。
でも、ただの夢なんでしょう?
「さあ、もうさよならだ。私はまたここで待ってるよ」
「……もうそんな時間?」
「残念だけどね」
そういって彼女は肩をすくめる。
行っておいで。
その声に抱きくるめられるような白い光があふれて、眩しさに耐えきれなくなって、私はいつも目が覚める。
今日も仕事だ。
あの人にいい報告ができるようにがんばらなくちゃ。存在しない、私の好きなひと。
イマジナリーフレンドってやつだろうかと考えたことがある。そんなにまずい域に達しているなら、カウンセリングを受けるべきなのでは、と。
それでも私はあの人を選んだ。今のこの状態がまずかったとして、それを救ってくれているのは間違いなく彼女だ。
当然のように消えた小舟を引き出しにしまう想像をした。
大丈夫。今日も頑張れる。
*
転落は予知できないもの。
よくわからない。わからないけど、社内で私を嫌っている人がいることは知っていた。
全員と気が合うなんてありえないと思っていたし、特に危害もなかったのでぼんやりしていた。馬鹿だった。
その同期が私の悪質な噂を流した。上司と寝たからプロジェクトに参加できた、とか、成績を改ざんした、とか、そんな突拍子もない噂。
幸いメンバーから外されることはなかったけれど、色んな人が私をそういう目で見るようになった。
本当に突然すぎて涙も出ない。でも、確実に心が擦り減っていくのを感じた。悔しい。どうかしてる…。
「…会いたい……」
帰るなりベッドに伏せた私は呟いて、鉛のような体が沈んでいくのを感じた。