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あかいいと。【ハンジ・ゾエ/進撃の巨人】

第13章 Dreamcatcher 【??×社会人夢主】


「えっと……いい一日でした。トラブルもなくて…。大きなプロジェクトのメンバーに選ばれたのでその分忙しいけど、みんな良くしてくれて」

「ええ、それ聞いてないけど!?おめでとう!」

「ありがとうございます」


身を乗り出されて、どき、と胸が鳴った。


「そっかあ、もう大丈夫そうだね。あの日の君はどうなるかと思ったよ」

「はい。最近よく眠れるから」


あの日とは、私が初めてこの夢に来た夜のことだろう。心身ともに疲弊しきっていた私はきっと酷い形相だったはず。


おもわず苦笑って、あなたのおかげです、と言うと、彼女はうれしそうにはにかんだ。大人っぽい眼差しに反して無邪気で、私は彼女から目が離せなくなる。


すると、合わせた視線をおもむろに下げ、彼女はまた軽く腕を振った。耳に馴染んだ音が響いて、私も倣って足元を覗く。


「わ…!かわいい!」


そこにあったのは小舟だった。明け方の空の群青色で、光るなにかをゆっくりと運んでいる。


「見てください、星が乗ってる!金平糖みたい、きれい……。これ、拾ってもいいですか?」

「もちろん」


許可を得た私はいそいそと小舟を持ち上げ、あまりの美しさに息を呑んだ。


両手ですっぽりつつめるくらいの舟。
ガラスみたいにつるつるで、じっと見ているとだんだんと色が変わって、朝焼けのような赤が滲む。白く輝く星をかかえた、希望そのものみたいだ。


パッと彼女を見ると、眼鏡越しの赤茶の瞳とかち合った。


「にあげる。君の未来はどんどんよくなるってまじない付きだ」

「い、いいんですか?こんなの……私に、…」

「あ、気に入らなかったらそのまま流してくれていいから!」


私はぶんぶんと首を振った。
……うれしい。心から嬉しい。

「夢みたいです」と、希望を胸に抱きしめる。「夢だからね」と、笑って頭を撫でてくれる。てのひらの温度が髪に伝わる。

夢でしか会えないこの人を、溺れるように好きになってゆくのが、こわい。
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