第13章 Dreamcatcher 【??×社会人夢主】
私は不眠症だ。
いや、少し語弊があるかもしれない。睡眠欲はあるが、眠るとことごとく悪夢を見る。枕をかえても安眠できると謳う音楽を流しても、まったく効果がなかった。
あまりの苦痛に、私はいつの間にか睡眠を諦めた。
しかし深いクマを作って出社し、ぼんやりと霞む頭で業務に臨んでいると当然疲れはとれない上、ひどいミスが頻発した。しかたなく浅く眠るとまた真っ暗な夢を見る。キリがなかった。
____あの人に会うまでは。
「……」
足裏にひやりとした感触。そして重力から解き放たれたように軽い体。星雲と、キラキラ流れていくあおい箒星。
ああ、帰ってきた。私はあたりを見回して、あの高い背を探す。今夜は私から驚かせようと目論みながら。
しかし、360度ぐるりと探してもあの人はいない。いつもなら瞼をひらいた私を覗き込んで、にっこりわらってくれるはずなのに。
私は不安に駆られて歩きだした。
指先がふれるたび、紺色の地面が波紋を描く。何重にも重なって、消える。ぽつぽつと音をたてながら夜を進み、果てなんてないように思える。
ねえ、どこにいるの?
「やあ!今日も月が綺麗だねえ」
「…っ」
「あれ?なんかかわいいの着てるね」
ぽん、と背後から肩に手を置かれ、声が掠れる。というか出ていない。
振り向くといたずらっぽく笑う、私の求めていた人がいた。
「もう!びっくりした…!」
「あはは、ごめんごめん。それ、新しい寝間着?すっごく似合ってるよ!」
臆面もなく褒められ、私は消えいりそうな声でお礼を言いながら赤くなってしまう。この言葉が聞きたくて、多くもないお給料を削ってかわいいパジャマを新調した。
白地に紫色の羽根がプリントされたパジャマ。
過去の自分と抱きあいたい気分だ。
私の頬を撫で、彼女___マントに隠れて性別も名前もわからないけれど、なんとなく___は軽く腕を振る。するとポン、と小さな爆発音がして、二人掛けのベンチが現れる。これがいつもの流れ。
「、今日はどんなことがあったの?聞かせてくれよ」
ベンチにすわると私たちは目をあわせて、流れるように言葉を紡ぐ。