第12章 R18 ユリイカ【同棲現パロ】
朝と昼のさかいめが好きだ。
ブラインドを上げた窓から注がれる光の粒たちは、ひまわり色を二人に纏わせる。
そんな休日に密やかな幸福を感じ、はそっと肩を寄せた。
恋人の手がいとおしそうに髪を梳いてくれる。
鏡に映るふたりは、恥ずかしくなるくらい優しい顔をしていて。
………ああ。
死ぬなら、今、死にたい。
「また変なこと考えてるでしょ」
のシャンプーの香りが、ハンジの鼻腔をくすぐった。
落とした囁きは、狭い箱の中にたちこめる甘ったるい空気を、ゆっくり押し流していく。
ハンジは鋭い。
明るく、根無し草のように振舞っているのに、ときどき驚くほど人の感情の機微に敏感だ。
本来の優しい性格がよくわかる。
はそんな彼女が好きで、心配でもあった。
「っ……ちが、」
「…これくらいいつでもしてあげるのに」
「もう、なんでもないってば」
言いながら眉を下げ、ハンジの顎を片手できゅっと挟んだ。
___希死念慮が生まれたのは最近じゃない。
昔からずっと、漠然と自身の死に方について考えてきた。
理由はわからない。けれど、遠い遠いどこかから、誰かの後悔が聞こえている気がするのだ。
潮騒のような、新緑のつらなりのような、褪せないみずみずしさを湛えて。
「ごめん…平気だよ、だからあんまり心配しないで。
私はちゃんとハンジといる……一緒にいたいよ」
「うん。そんなの私もだ」
ハンジが歯ブラシを咥えたのを見届けて、はリビングに向かった。