第12章 R18 ユリイカ【同棲現パロ】
『は、今のでいてよ……。確かにここにいるなら、私はそれで構わない』
「…ん」
カーテンからこぼれる朝日に、ゆっくり瞼をもちあげる。
ふわふわとまどろみながら携帯を掴むと、すでに昼近くを告げる画面が浮かんだ。
怠惰な目覚めだ……と、は鉛のように重い上体を起こした。
隣には気持ちよさそうに眠るハンジの姿があり、叩き起こすのも忍びない。
は気に入りの鼻のラインをなぞって、「かわいい」とだけひとりごちる。
腹に巻きついたハンジの腕をほどき、洗面所に向かう。
歯を磨き、顔を洗い、保湿クリームを塗りこんでいると、しばらくしてのどかな欠伸が耳に届いた。
「おはよ~……」
「おはよう」
起き抜けですこし掠れた二人の声が、この家で一緒に暮らしている実感を濃くさせる。
例えばこんな、B級映画のワンシーンにもならないような呆けた時間が愛しいのだ。
二人は揃いのキャミソールを着ている。
ハンジが黒で、が白だ。
胸に大きな鳥が刺繍されたそれは、お互い一目で気に入った年季もの。
しかしの目線は、どうしても相手の下半身に向いてしまう。
「ハンジ…お願いだから何か履いて。私までスースーする」
そうなのだ。
かろうじて下着は履いている。
しかしハンジのまっすぐな脚が、煽情的に、するりと惜しげもなく伸びていた。
日常なので慣れてしまいそうなものだが、やっぱり何となく落ち着かない。
「なんで毎朝毎朝脱いでるのっ?前日の夜にショートパンツ履くじゃない!」
「ええ~…?張り付く感じが煩わしいんだよ。知らないうちに蹴っ飛ばしてる」
そんなわけあるか、の突っ込みを飲みこんで、が口をとがらせる。
「……風邪ひくよ。いくら夏でもお腹冷やしちゃだめなんだからね」
わかっているのかいないのか。
ハンジは事もなげにガシガシと頭をかき、返事の代わりにねむたげに唸った。
その姿にため息をつけば、ミントの香りが鼻に抜けていく。
「、歯磨き粉とって」
「ん」
「ありがと」
少しだけ指が触れ合った。
「だいぶ寝坊しちゃったね、私たち」
そう言ってのびやかに笑うハンジに、不覚にもは胸をつかまれるのだった。