第8章 Milky Way 【七夕/分隊長×調査兵】
「ねえ、この短冊どうすればいいんだろ?埋める?」
「あっ!聞くの忘れちゃいました」
サッと下がった眉を軽く押し上げてやり、私はうんうんと思案する。
「じゃあ木にでも結んじゃおう!貸して、」
「えっ」
彼女の手から短冊を抜き取ろうと手をかけたが、ぐぐっと力をこめられてしまった。
呆気にとられるも、両者譲らない。
「ちょ、ええ?破ける破ける!」
「自分で結ぶので平気です、から!」
「いいって、貴女に木登りさせるわけにいかないだろ!?どうせあとで見えちゃうんだし」
「た、確かに……」
それを聞き若干引っ張る力が緩む。
ううう、と呻いたは口をすぼめ、正に渋々といった様子で短冊を明け渡した。
よかった。
「えらいえらい」
そして、すかさずそれに目を通す。
悪魔ー!と叫ぶ声が聞こえるが、何とでも言ってほしい。気になるものは気になる。
しかし、私とのことを願ってくれていたらいいなあ、なんて呑気な考えは立ち消えになってしまった。
『ハンジさんより先に死にません。 』
私はどんな感情を抱けばいいのかわからなかった。
予想内かつ、予想外の一言。
「ぶふっ…これ、お願いじゃなくて宣言だよ」
「だっ、だって…!」
星が流れるような刹那、彼女は躊躇う表情をみせたが、笑わないでくださいねと前置きして私を見上げた。
「ハンジさんを措いて死にたくない。
ずっと貴方を支えるのは私でありたいし、弱みを見せたがらない貴方が寄りかかるための、居場所を作りたいんです。
願掛けじゃあまりにも頼りないって思って」
まばらな木々が葉を擦り合わせ音を立てる。
一生懸命存在を示そうとするように。あるいはシグナルのように。
「だからこれは、誓いです」
剣呑を孕んだ瞳は微かに潤み、確固とした意志を持ってそこにあった。
…そんなことを考えていたのか。
曝け出された恋人の心を受け止める。
こんなに大切な人ができるなんて、想像もしていなかった。
私も貴女に想いを返したい。きっと拙くなってしまうだろうけど、聞いてくれるかい。