第8章 Milky Way 【七夕/分隊長×調査兵】
「ハンジさーん、こっちこっち!」
「早…っちょっと待って!」
朗らかな雰囲気をまとって、私たちは外に続く扉を開けた。
インクの滲んだ『短冊』はそれぞれの手の内に。
「うおお、何この雰囲気!最高に恋人っぽい!」
「恋人ですけど…!」
最もな返しに笑い、そうだねえ、と答えれば互いの頬が染まる。
さらさらと寝間着の裾をはためかせ、夜を駆けるが、まるで羽根を背負った天使のように思えた。
縺れ足で立ち止まり、踊るようにこちらを振り向く彼女。
その美しさに今すぐ抱きしめたい衝動にかられてしまう。
なだらかな丘のある中庭は、なるほど、確かに空を一望するのにぴったりだ。
私たちは隣で星を見上げる。
すると炭酸のはじけるような歓声が、誰もいない夜にこだました。
「きれい……!」
「うん、こんなの初めて見たかも…」
「『アマノガワ』っていうみたいです。確かに川みたいに連なって光って、素敵ですね」
アマノガワ……天の川か。
名付けた人はなんて美しい感性の持ち主だろう。
しばしその壮麗に目を奪われていると、思い出したようにが声を上げる。
「そうだ、ハンジさんは何をお願いしましたか?」
ひょこっと首をもたげ、私の二の腕あたりに髪が擦れた。
「っと、だめだめ。当ててごらん!」
「うーん……『巨人の謎を解明できますように』!」
「…そりゃもちろんしたいけど、流石にそんな風情のないこと書かないよ…」
それを聞いたは、心底幸せそうな笑い声をもらす。
わかるよ。だって私も同じ気持ちだ。
些細なことが大切で、可笑しくて、貴女の言葉が全部愛しい。