第6章 熱帯魚たち 【現パロ】
*同棲中のふたりのお話
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目を射貫くような陽照り。
けたたましく脳をかき乱す蝉の声。
ぬるい風、毛穴という毛穴からじわりと噴き出す汗の玉。
紛れもない真夏日だ。
あられもない姿の私たちは、蒸す部屋の中で大の字に寝転がっていた。
ハンジさんが団扇を放る。
「あ゛っづう……」
「ほんとに…このままじゃ死んじゃう。ああ…」
辛抱たまらず私はハンジさんめがけて仰向けに倒れこんだ。
もちろんちっとも冷たくなんかないけれど暑いと開放的になれるものだ。
ぐえっ、と苦し気な声が頭上で聞こえる。
「~、暑重いよ~」
「私だってあっついですけど、くっつきたい気分なんです」
文句を垂れる割に体をどかさないどころか、私のお腹をぽんぽんと撫でてくれる。
ハンジさんのこういうところが好き。
「~~っあーもう、可愛いなあ本当!」
脚も腕も絡めて力いっぱい抱きしめられた。
お互いの汗を吸った服が煩わしい。
でもなんだかぼうっとして、しあわせ…。
「ひゃっ…ぁ」
突然走った甘い刺激。
何事かと身を捩ろうとすると、ハンジさんの指が私の胸の突起を弾く。
畳みかけるように首筋に吸い付かれ、バタバタと足を泳がせた。
どうして今!
「んッ…ちょっ、と!さすがにこんな気温の日にする気になれません!」
「え、がしたいのかと思ったんだけど」
「違います」
ただ普通に触れたかっただけだ。
するりとやわらかな感触が離れていく。
「…ばか」
私は起き上がり、今度は近くの扇風機の前に移動した。
異星人の声が気だるげに鼓膜を揺らす。
「はあ、早くクーラー直しましょう。いつか干からびちゃいそうです…」
「そうしたいのは山々だけど…いくら貴女の希望でも聞けないよ。お盆だからね」
そうなのだ。
よりにもよってこの時期に冷房が故障し、私たちは付き合って以来の窮地に立たされている。
決して大げさではない。
白昼の猛暑を喩えるとするならまさに釜茹で地獄。
こんなことがあろうか。