第1章 転校初日から
次の日。私は莉犬くんと一緒に移動教室で中庭の通路を歩いていた時だった。前方からあの五人が歩いてきた。
「なーくん。どうして、昨日の高等部会サボったん?」
「愛奈ちゃんと遊んでた」
そんな会話が聞こえて、背筋が凍った。るぅと会長の顔が怖い。隣の莉犬くんも顔を蒼白させている。
「昨日、なーくんと遊んでたの?」
莉犬くんに問い掛けられて、私は苦笑いをした。
「引っ越しの手伝いしてくれただけだよ。初日からすごい人連れてきたから、親にビックリされちゃった」
初日からこんなことになるなんて思ってなかった。なーくんとは分かり合えて良かったけど。
「ああ、昨日の生意気女だ」
るぅと会長がヤバい顔で話し掛けてきた。
「追放になるなら、教科書も要らないよね」
るぅと会長が私が持っていた教科書を奪い取り、地面に落とした。そして、彼が手に持っていたジュースを掛けようとした時だった。
「るぅとくん、それはダメだよ」
なーくんがるぅと会長の手を掴んで止めた。
「なんだよ、なーくん。なーくんならあんな女、すぐに追放するでしょ?どうしたの?」
るぅと会長の言葉に、なーくんは眉間に皺を寄せていた。きっと、覇組のことを言いたいのだろう。言ってしまえば、るぅと会長は何もしなくなるから。
「なーくん、ちょっと待ってて!」
私は急いで水場に行き、バケツに水を注いで持ってきた。
「おりゃー!」
見事にるぅと会長に水が掛かった。いじめっ子の心情を知れた気がする。
「お前、マジ最高じゃん!俺も水かけよー」
「ころん……いい加減にしろ」
びしょ濡れになったるぅと会長がころんくんを睨み付けた。
「愛奈ちゃん、それは酷いよぉ」
莉犬くんが目を潤わせて言ってきた。確かに調子乗り過ぎたかな。
「愛奈ちゃん、最高だよ。これでるぅとくんの腹黒な心も浄化されるよ」
なーくんは上に親指を立てて笑った。
「私はそんな威張り散らす人になんか従わないからね!行こう、莉犬くん」
「あっ、うん……」
そして、私と莉犬くんは教室に向かったのだった。