第1章 転校初日から
「綺麗になったー!」
「終わったー!」
私達は、疲れて地面に寝転がる。顔を横に向けると、お互い目が合った。
「俺、久しぶりにこんなことしたかもしれない」
「そりゃそうでしょ。なーくんすごいじゃん」
すると、なーくんは急いで起き上がった。その目は何故か輝いていた。
「愛奈ちゃん!」
「……ドワッ!?」
急に抱きつかれ、私は戸惑いを隠せなかった。
「なーくんって呼んでくれてありがとう。みんな、俺のことを恐れて仲良くしてくれないんだ」
そういうことか。私もそうだったから分かる。
なーくんは体を離して、顔を真っ赤にさせていた。
「ねぇ、愛奈ちゃんのご両親って何の仕事してるの?」
それが一番聞かれたくなかった。それを知ったら、みんながなーくんと話す時みたいな態度に変わるから嫌なんだ。
でも、同じ目線のなーくんなら話しても大丈夫かな。
「ウチは……海老沼財閥の親戚だよ。通称覇組と言われてる大手企業。名字も全然違うんだけど、海老沼家の血筋で唯一の女の子だから、色々とねぇ……」
海老沼財閥。全てを制する者として覇組と呼ばれている。私の正体を知れば、瑠組財閥のるぅと会長も顔色が変わるだろう。
「でも、さっきみたいに仲良くしてくれて嬉しかったよ!前までずっと、腫れ物に触れる感じだったから嫌だったんだ」
私がそう言うと、なーくんは微笑んで私の頭を撫でた。