第5章 遊園地の観覧車
「分かってたんだよ。あの夏祭りの時、なーくんに告られたんだろ?」
「うん……」
未だにどう返していいか分からない。なーくんもさとみくんもきっと本気だ。なのに私は迷ってて、情けない。
「お前を困らせるのは目に見えてたんだ。だけど、どうしても伝えておかないと他の奴らに取られるんだろうなって思って……」
観覧車が上へと昇っていく。私の鼓動も早くなっていく。
「本気でお前が好きなんだ!出会った時からお前のことしか考えられないくらい好きだったんだ!」
さとみくんの勢いで充分想いが伝わる。
私は本当にどう返してあげたらいいの?
「もうなーくんが一番なんだろ……分かっててんだ。告ってもムダなんだ……」
さとみくんはそう言って俯いた。
私は何も返せない。何もしてあげられない。何も出来ない。
こういう大事な時、私は何も出来ないんだ。
『さとみくんが好き』そう言えば平和的に解決するのだろう。
でもこんな時にもなーくんの顔が浮かぶ。
「……さとみくんも大事な友達だと思ってる。今はまだなーくんにも返せない。選べられないの」
私が精一杯考えて言った返事だった。
「仕方ねぇよ。だいたい分かってたんだ」
さとみくんは私の隣に座り、頭を撫でてくる。