第1章 転校初日から
「愛奈ちゃんのお弁当ってすごいね。手作り?」
さとみくんがそう言ってきて、私はきょとんとした。
「うん……自分で作ってるよ」
「マジで!?すげぇ!」
なーくんが目を見開いて驚きの声を上げていた。
「そんなことないよ……レパートリー少ないし」
いつも両親が仕事で居ないから、適当にご飯を作って食べてるから。朝も両親が早く行ってしまうので、自分で作っている。
だから、両親が休みだった昨日は早く帰りたかった。家族との時間を大切にしたかったから。
「愛奈ちゃん、俺にも作ってよ!」
「えっ!?」
なーくんの言葉に私は目を見開いた。そう言うなーくんの弁当は、すごそうな弁当屋のお弁当だった。
「俺にも作ってー」
さとみくんもそう言ってきて、私は狼狽えていた。
「遠井さん、俺にも作ってよ」
「はぁ?じゃあ、愛奈ちゃんの返事で決めるわ」
ジェルくんのお願いされた遠井さんにも決断を委ねられてしまった。
どうしよう、自分を含めて三人分なんてキツい。
「弁当代も払うから、お願い!」
なーくんが両手を合わせて、頭を下げてきた。政治家の息子に頭を下げさせるなんて嫌だ……。
「いいよ。頑張って作る。お代は無理に取らないから、自分の弁当箱買ってきて」
「おっけーかますぞー!」
なんか話の流れが変わった?お弁当箱買いに行くぞーっていう意味なの?なーくんの造語、よくわからん。