第5章 ー彼の過去・私の個性ー
『…どうぞ』
部屋に入ってから無言の轟君の前に
淹れたての紅茶とお茶菓子を差し出す
「ありがとう」
『それで…さっきのはどういうこと?』
「…そのままの意味だ
医務室での話が聞こえた」
内心焦る私の気持ちとは裏腹に
彼は淡々と紅茶を飲みながら答える
『…てことは大体の話は
聞いちゃったってことでいいかな』
「なんかわりぃ……
盗み聞きするつもりは無かったんだが…
『いや、私も安易だったから……
聞いてたならわかると思うけど
私の個性のことは黙っててくれる?』
そんな私の願いに彼は
"あぁ"とだけ言ってくれた
「一つ気になったんだが、
その力が憎くないのか?
そのせいでお前の両親は…
『憎いよ…私のせいで2人が行方不明になって
…この10年何度も生きるのを諦めようとした
でも私が2人に愛されてたのは確かだし
2人は私の個性を素敵だと褒めてくれたから
それにこの力があるから2人を探せる
そう思ったらさ…憎いと思う反面この力が
あって良かったとも思うんだ』
私がそう言うと轟君は左手をじっと見つめ
「俺はクソ親父の"個性"が憎い」
ただ一言そう言ってのけた