第16章 ー募るそれぞれの想いー
「…椿紗ちゃんが幸せそうで…
その笑顔が見れてお婆ちゃん嬉しいよ」
そう言ったお婆ちゃんの言葉は
あの事件からずっと見てきたから言えること
『うん…私雄英で皆に会えて良かった』
「うんうん、そうだねぇ……
椿紗ちゃんもう愛癒香達の復讐はやめて
…普通の幸せを掴んでもいいんだよ?
好きな人と好きな事して笑っていいのよ」
パパとママの復讐をやめるーー?
好きな人と笑って過ごすーー?
『お婆ちゃん…それは出来ないよ
私は2人を探す義務がある…それにさ
大事な人ができたら失った時辛いでしょ?』
その言葉にお婆ちゃんも何も言えず
私もそれ以上何も言うことは無かった
そうーーこれでいいんだ
大事な人はお婆ちゃんだけでいい
1人だけならまだ護れるから
『…少し外出てくるね』
暗い空気に耐えれずそれだけ言い
私は個性で翼を出すと夜の空へ飛び立つ
あっちと違って人工的な光が少ない街
その分星の光が多くて心が落ち着くがーー
街全体を見渡せるビルの上に降り
その景色を見渡しながら物思いにふける
今この瞬間にもこのどこかで個性によって
辛い思いをしてる人がいるのかもしれない
『…本当こんなものがあるから』
「争いが起きるんだよな」
背後から聞こえた声に振り返れば
そこには私と同じようなーー
真っ赤な翼を生やした男性がいた