第43章 「指輪の小説家」
―――西園寺自宅―――
自宅は本に溢れていた
西園寺「ない…!!ない…!!」
瞬平「どうしたんです?」
西園寺「ないんだ指輪が…!!」
晴人「指輪?」
西園寺「ここに入れておいたのに…!!」
西園寺は着ているジャケットを探す
西園寺「どこだ…!!どこで落とした…!!本屋か…!!」
西園寺は戻ろうとしていた
瞬平「ちょちょちょちょ!!外へ出ちゃダメです!!」
西園寺「~っ!!」
晴人「そんなに大事なもんなのか?」
西園寺「当たり前だ!…あれは…私に再び…小説を書く意欲を与えてくれた…希望の指輪なんだ…!」
『希望の…』
西園寺「あぁ…。10年前…スランプで小説が書けなくなってしまった私は…毎日憂鬱な日々を送っていた。これからどうなってしまうのか…そんな不安から…私はいつしか自分の命を絶とうとまで…思い始めていたんだ…」
《ねぇ、それ、私のブランコ》
西園寺「儚げな少女だった…」
《これ、ママがくれたの。ママ言ってた。自分がどうなるのか不安になったら、自分がどうなりたいか考えなさいって。そうすると、明日が楽しみになるって!ブランコ乗ってもいいよ!》
少女はその場を去っていった
その場には少女の指輪が落ちていた
西園寺「少女の希望に満ちた瞳が…私にもう一度…前に進む力をくれた…」
晴人「その子とは…」
西園寺「指輪を返そうと思って何度も足を運んだんだが…それっきりだ…。彼女が…この本を読んで気づいてくれたら…もう一度…私の前に姿を現してくれたら…。そう思って…サイン会を引き受けたんだが…彼女に指輪を返し…感謝の気持ちを改めて伝える。そうすることで…この小説も…本当に完成するんだ…!」
プルルルルルル…
西園寺「あぁもしもし、私だが。何だ君か…」
~♪~♪~♪~
西園寺は電話をしながら晴人たちの前から去った
聞かれたくない話なのだろうか
晴人「もしもし凜子ちゃん?え…?国安に?」
どうやら木崎のおかげで国安0課へ出向になったらしい
凜子「あんまり無理はしないで。じゃあ」
瞬平「どこに行くんですか!?」
西園寺は家から出ようとしてた
瞬平「ファントムに狙われてるんですから、先生は大人しく缶詰めしててもらわないとっ!!」
西園寺「わかってる!!ちょっとトイレに行くだけだ!!」