第14章 ホークスが好きな彼女
『それで、最近はーーー』
彼女から、高校の話を聞いた。
「…へぇ!それはいいね」
俺も、彼女も。
想像ができなかった、普通の高校生の日常。
珍しく、楽しそうに。
口角を上げて話す彼女の声に耳を傾けていると。
ほんの少しだけ。
まるで俺も雄英の生徒になれたかのような気がした。
『…あ、もうこんな時間なんだね』
度々、彼女の口から告げられる、その言葉。
それが「もう遅いから、帰ろうよ」という意味だとわかっていながら。
俺は何度も何度も、気づかないフリをした。
「…あー、ほんとだ。…時間で思い出したんやけど、この前ー」
(…何か、話題…)
子どもの頃のように。
俺はこの楽しい時間の終わりが来るのを拒み続けて。
子どもの頃のように。
俺は彼女の優しさに甘えて。
子どもの頃のように。
彼女は俺を甘やかしてくれて。
子どもの頃のように。
二人とも何も変わらない。
けれど。
ーーーー鷹見くん、もうダメだよ
『ーーーホークス、もうダメだよ』
子どもの頃のように
「ーーー………うん、帰ろう」
キミはもう
大人になってしまった俺の名を
親しげに呼んではくれなくなった。
が静かに玄関の扉を閉めて、寮へと帰ってきた。
轟が呼びに来た時間から、すでに夜はだいぶ更けている。
暗く電気が消えている共有スペースを横切り、女子棟へ向かおうとした時。
「」
『わっ!びっくりした…!』
リビングから、轟の声が聞こえた。