第14章 ホークスが好きな彼女
「…あれ?エンデヴァーさんちの焦凍くん!」
『え?』
学校へ背を向けていたが振り返ると、そこには敷地内から出てきた轟の姿があった。
訝しげな視線をホークスへと向けている轟の様子を見て、が慌てて彼の方へ駆け寄っていった。
『轟くん、カーディガン持ってきちゃった。ごめん』
「…、こんな夜に何してんだ」
半袖の轟に向かって、手に持っていたカーディガンを差し出している。
その二人の様子を、微笑を固めたままの表情でじっと眺めていたホークスは、ようやく表情筋を動かして、さらに完璧な笑みを浮かべた後、轟に声をかけた。
「こんばんは!ウチの子と仲良くしてくれてるようで、どうもね」
「…ウチ?ホークスと知り合いか」
「知り合いも何も、何年も前から懇意にしてる仲でね。君が迎えにきたってことは、やっぱり門限があるのかな?」
「、寒ぃんだろ」
俺じゃなくて、お前が着ろよ。
そう言って、轟はホークスから視線を逸らし、の手から自分のカーディガンを受け取った。
そして躊躇いなく彼女の両肩に、それを羽織らせた。
『ありがとう、でも轟くんが…』
「…いいから」
そして、ようやく。
轟はまた、警戒心を孕んだ視線を、目だけが笑えていないトップヒーローの方へと向け直した。
「こんな時間に呼び出して、こいつに何かあったらどうするつもりですか」
『違うよ、私が頼み事をしてて』
「だとしても。夜中に呼ぶ必要はねぇだろ。大方、インターンの関係だろうが…この時間に会うことになったのは、あんたの都合が大きいんじゃないですか」
まるでホークスの都合でが振り回されているかのような轟の口ぶりに、彼女が反論した。
笑みを消したまま、彼の言葉を最後まで聞いていたホークスは、一言、低く声を発した。
「……………で?」
ただならぬ威圧感を感じ、轟がより一層、ホークスへの警戒を強める。
轟の方を向いていたがホークスの声を聞き、彼の方を向いた。
そのタイミングで、ホークスは人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、軽口を叩いた。
「こっちでの仕事が終わった時にから電話が来て、なーんか会いたくなっちゃったんだよねぇ」