第12章 それぞれの個性
(おっと、これは想定外だ!!)
後輩に、こんな。
こんなにキュートなのに。
こんなに喧嘩っ早くて。
こんなに鋭い子がいたなんて。
(俺の顔面、ものすごい狙ってくる!!ゴミステーションでの遭遇で気づかれた?だからだよね、「呼吸するな」ってことだよね!?)
文字通り。
息つく間がないほど、彼女の連撃は凄まじい。
通形が浅く息を吸った瞬間、それを狙ったかのように、彼女は彼の顔面に打撃をいれようとする。
だから、呼吸ができない。
「息継ぎ」ができない。
連撃の応酬が始まって約10秒が経過した。
心拍数が徐々に上がってくる。
とても息苦しい。
(…ん?苦しいのかな)
身体に負荷がかかってきて、動き回るのがキツくなってきたのは確かなのに。
口元がいつも以上ににやける。
(…なんだこれ、すごく)
「こんなに動いたの久々ですっごく楽しい!!!君もだよね!?今日イチ楽しそうだもんね!!」
『…えっ』
通形が発したその言葉を聞いて。
はハッとした。
「隙あり!」
ドッ、と。
その通形の言葉と共に、重たい拳がの腹に叩き込まれた。
彼女は目を見開き、息を詰まらせ。
その場に力なく崩れ落ちた。
「ギリギリちんちん見えないよう努めたけど!!すみませんね女性陣!!とまァ…こんな感じだよね!」
「「…わけもわからず全員腹パンされただけなんですが…」」
手合わせは、1年A組の惨敗だった。
通形ミリオは、「透過」の個性を持つことと、ワープがその個性の応用であること、そして、彼の個性は強いというより、デメリットの方が多く付き纏う個性であることを後輩達に明かした。
「この個性で上に行くには、遅れだけはとっちゃダメだった!予測!!周囲よりも早く!!何より予測が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!」
長くなりはしたけれど、コレが手合わせの理由。
通形はそう熱弁をふるい、言い切った。
「俺はインターンで得た経験を力に変えて、トップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ1年生!!」
その演説を聞き、後輩達が自然と拍手をし始める。
ありがとうございました!!という後輩達の腹の底から響く声を聞き届けて、ビッグ3の三人は、体育館を後にした。