第12章 それぞれの個性
「あとは近接主体だよね」
ふぅっと息をつき、後輩達に容赦のない腹パンをして回った硬い両手を、ブンブンと水を切るように振りながら。
通形が前線に立っていた生徒達の方へ近づいてくる。
「何したのかさっぱりわかんねぇ!」
「すり抜けるだけでも強ェのに…ワープとか…!それってもう無敵じゃないすか!」
「よせやい!」
「何かからくりがあると思うよ!」
焦り始めたクラスメイト達に、緑谷が声をかけた。
「何してるかわかんないなら、わかってる範囲から仮説を立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」
緑谷曰く。
すり抜けの応用でワープなのか、ワープの応用ですり抜けなのか、どちらにせよ構わない。
通形の攻撃は、直接攻撃。
カウンター狙いでいけば、触れられる時が来るはずだという。
「オオ!サンキュー!謹慎明け緑谷スゲー良い!!」
「探ってみなよ!!」
声共に駆け出した通形の身体が、地面へと沈んだ。
直後、まるでワープしたかのように。
緑谷の背後、彼が現れた。
「発出」地点を予想していたのか、緑谷はローキックを背後に向けて放ち、応戦する。
「だが必殺!!ブラインドタッチ目潰し!!」
「うっ!?」
通形が緑谷の目に向かって、自身の指を押し出した。
ハッタリだとはわかっていても、反射ではどうにも防ぐことができず、一瞬、瞬きをしてしまう。
『緑谷くん!』
が空中で体勢を崩した緑谷に手を伸ばすが、間に合わず。
緑谷のみぞおちに、通形の重い拳が叩き込まれた。
「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね」
ならば当然。
そいつを狩る訓練するさ!!という言葉を言い切って、すぐ、通形は再びワープを繰り返し、ドドドドドと流れ作業のように、後輩達に容赦のない腹パンを喰らわせていく。
「さぁ!最後は君だけだよね!!ねぇ、君さーー」
正面から突っ込んできた通形に向かって、が飛び込んでいく。
冷たい表情を浮かべ、瞬きすらしない彼女の異様な闘気を察知し、通形が真剣な表情を浮かべ、口を閉じた。
通形の拳と、彼女の蹴りが交差する瞬間。
二人の姿が一瞬消えた。
そして。
両者、目にも止まらぬ超高速移動を繰り返し、繰り返し
殴っては弾かれ、蹴っては受け流される、そんな連撃の持久戦が始まった。