第11章 お初にお目にかかります
「何で、そんなところを火傷したの?」
無邪気な笑みを浮かべている波動の視線につられて、何人かの生徒達が轟の方を振り返る。
急に質問を投げかけられた轟は、一瞬怪訝そうな顔をして、重い口を開こうとした。
「……それはーー」
『答えなくていいよ』
はっきりとした、の声が教室に響いた。
波動が、僅かな苛立ちを滲ませている彼女の声に反応し、今度はへと視線を向けた。
そして、ハッとまた何かに気づいたのか、質問を投げかけた。
「あっ、ねえねえ転入生ってあなただよね!?私知ってるの、雄英高校は創立から一度も転入生を受け入れたことなんてないんだって!ならあなたは何で転入できたのかな?すっごく気になるの、教えて!」
は何も答えず、その代わり、視線を波動から外さない。
波動は、数秒間黙って答えを待っていられたものの、目についた他の生徒にまた好奇心を駆り立てられたらしく、口を開き、お喋りが止まらなくなってしまう。
「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?」
「峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?」
「蛙吹さんはアマガエル?」
「ねえねえ尾白くんは尻尾で体を支えられる?ねえねえ答えて気になるの」
一向に「自己紹介」すらままならないビッグ3の体たらくに、相澤が低い声色で、一番近い位置に立っていた最後の男子生徒に声をかけた。
「………合理性に欠くね?」
「イレイザーヘッド安心してください!!大トリは俺なんだよね!!」
笑い顔で明らかに焦っている大トリ担当の彼は、すぐさまビッグ3の威厳を取り戻そうと、声かけをした。
「前途ーー!!?」
突如として投げかけられた「ゼント」という単語に、思い当たる返答がなく、クラスメートたちは困惑する。
数秒間の沈黙の後。
こりゃダメだと自己判断した通形ミリオが、急ぎリカバリーに入った。
「多難ー!つってね!よォしツカミは大失敗だ!!」
ハッハッハ!!と寒々しい空気を笑い飛ばすかのように、彼は闊達な声を発する。
「そうだねェ…何やらスベリ倒してしまったようだし…君たちまとめて、俺と戦ってみようよ!」
「えぇ!?」
その身を持って、俺たちの「経験」を知ってもらおう。
そう提案したミリオの言葉を聞き、相澤は一考し。
返答した。
「…好きにしな」