第10章 お先ダークネス
「なァ、今日のマイクの授業さ…」
「え、砂藤…まさかおまえも…?」
「当然のように習ってない文法出てたよな」
「あーソレ!!ね!私もビックリしたの!」
今日の授業の感想を話し込んでいるクラスメート達の声を聞き、部屋の清掃を続けていた緑谷が、冷や汗をかき始めた。
(たった1日で、置いてかれてる感…!!)
「という顔だね謹慎くん!」
「キンシンくんはひどいや!あの、飯田くん、インターンって何?」
「俺は怒っているんだよ!授業内容等の伝達は先生から禁じられた!」
悪いが、二人ともその「感」をとくと味わっていただくぞ!と、お手本のようにプンスカと怒っている飯田が踵を返し、爆豪にも声をかけた。
予想通り「るっせんだよわかってらクソメガネ!」という反応を返した爆豪のすぐ横を通って、が緑谷の前へ進み出た。
『緑谷くん、ただいま』
「あ、おかえりさん!」
(……?)
何か話があって声をかけてきたのだろう。
そう思い、緑谷が一旦手を止め、彼女に身体を向けた。
しかし彼女はなぜかじっと緑谷を見つめるばかりで、言葉を発しようとしない。
「…あれ?」
『あぁ、ごめん。個性について教えてほしいんだけど』
「えっ!!!?えっ、まままさかかかっかかかっちゃん!?」
「クソデクわかりやすくビビってんじゃねぇよ殺すぞ!!」
『ん?…なんでビビるの』
「ビビってない!!ビビってないよ!!あっ、はい何でしょう!!」
『…緑谷くんの個性は、大多数と違うよね』
なぜか、緑谷の顔から血の気が引いていく。
ドサドサっと彼の腕から落ちたゴミ袋をが片手で拾い、話を続けながら玄関へと向かっていく。
『そんなにいっぱいは待てないよ。手伝うから、キミの個性のことを教えてほしい』
「えっ、申し訳ないからいいよ!さんはゆっくりしてて!それに僕の個性の話って…!」
教えてほしいから、その代わりに手伝うよ。
彼女は、嫌と言わせない雰囲気でまた靴を靴箱から取り出して履き、玄関の扉を開いた。
『キミの超パワー、キミの身体に合ってない』
そう言って先に外へ出た彼女の言葉を聞き、爆豪が振り返る。
緑谷はハッとして、真剣な面持ちのまま、彼女の後から、玄関をくぐった。