第10章 お先ダークネス
二人で寮への帰路に着く。
正面玄関を出て、数分後。
彼女は言った。
『怒られてしまった』
「…窓の外を眺めてたからか」
『ううん、仮免のこと』
やっちまったもんは仕方ねぇだろ、と。
轟は言った。
『個性のこと、帰ったら緑谷くんに聞いてみよう』
「土日、俺たちと同じ講習出るんだろ。仮発行と不合格と、何か待遇が違うのか?」
『仮発行だから、講習出ないと仮免許剥奪みたい。インターンに行けるのはありがたい』
「インターン、行くのか。さっき相澤先生が言ってたが、体育祭での指名がないと、そもそもインターン活動をする事務所を探すこと自体難しいらしい。職場体験と違って学校が仲介に入るわけじゃなく、学生自身のコネクションを使って事務所に採用してもらう必要があるんだってな。おまえは体育祭出てないが、前の学校で世話んなった事務所があるのか?」
『うん。ホークスの所に行こうと思ってる』
「…ウイングヒーローか。確か事務所は九州だよな。土日講習出て、インターン参加ってキツくねぇか」
『キツイのかな。確か平日の活動は公欠として認められてるはず』
「…じゃあ平日は九州で、土日が講習か」
ハイツアライアンス寮へ辿り着き、轟が先に靴を脱ぐ。
「せっかく転入してきたのに、それも変な話だな」
少しつまんなそうに呟く轟のすぐそばで、彼女も靴を脱いだ。
そして、靴箱に仕舞った轟の靴の隣に、なんとなく自分の靴を並べて置いた。
『おや?もっと一緒にいたい?』
茶化しているのかわからないような真面目な顔で、彼女がからかってくるから、轟も真顔で彼女を見つめ、返事を返す。
「……どうだろうな」
仲良く同じタイミングで帰ってきた二人の姿を見逃すことなく、リビングで横になっていた峰田が「ヒエラルキー…!」と唸った。
その声を聞き、制服のまま、リビングでゆったりとしていた切島が玄関へ視線を向け、二人に声をかけた。
「おかえり、轟!!相澤先生なんだって?」
『…切島くん。ただいま。イレイザーは、「仮発行で浮かれるな、俺からしてみれば、個性を扱いきれてないおまえはうちのクラスでダントツ最下位の成績だ」と仰っていました』
「うわー相澤先生きっつー。仮発行でも何でも、試験時間中は合格点満たしてたんだから、少しは多めに見てほしいよな」