第10章 お先ダークネス
仮免試験終了直後、は個性を暴発させた。
誰がどう聞いても、どう見ても。
そのアクシデントのせいで、彼女の試験結果は喜ばしいものであるはずがないと分かるような、散々な結末だったのに。
公安委員会が彼女に出した判定は
仮免試験の仮合格という、何とも曖昧な合格判定。
「じゃあまァ…今日からまた通常通り授業を続けていく」
無事に始業式が終わり、1年A組のホームルームが始まった。
転入生が入ってきたために、最後列だけ一席増えた見慣れない座席配置に変わっている教室を俯瞰しながら、相澤は学籍簿を開いた。
「ごめんなさい、いいかしら先生。さっき始業式でお話に出てた「ヒーローインターン」ってどういうものか、聞かせてもらえないかしら」
「先輩方の多くが取り組んでいらっしゃるとか…」
口火を切った蛙吹の言葉をきっかけに、生徒達から、まだ見ぬ「校外活動インターン」への説明を求める声が相次いだ。
予定を変更し、校外のヒーロー活動についての説明を掻い摘んで教えてくれる担任の言葉を聞き流しながら、は一人、ぼんやりと、窓際最後列の座席から、窓の外を眺めている。
クラスメート達が矢継ぎ早に担任へ質問を投げかける中、何か別のものに夢中になっているらしい彼女に気づき、轟がつられて窓の外を見た。
「」
その直後、相澤の声がクラスに響く。
『ーーーはい』
一瞬の間を置いて。
彼女が窓から視線を逸らした。
直後。
窓のすぐ外を何羽かの鳩が羽ばたいていった。
「あとで職員室に来るように。じゃ…待たせて悪かった、マイク」
「一限は英語だー!!すなわち俺の時間!!今日は詰めていくぜーアガってけイエアア!!!」
学級担任と科目担任の交代後。
ようやく通常授業がスタートした。
一限、二限と順調に授業は進んでいき、早くも放課後。
教室で今日の授業の復習をしながら、轟が職員室へ向かったを待っていると、終礼から20分ほど過ぎたところで、彼女が戻ってきた。
『あれ?』
「用事は済んだのか」
『うん。もしかして待っていてくれたの?』
キョトンとしている彼女。
轟は一言、「帰ろう」と声をかけて、暇つぶしに開いていた教科書をパタリと閉じた。