第8章 落日
「おまえ、目立ちすぎだよ。俺らが霞んじゃうだろ?」
は、目を見開いて。
不運にも察してしまった。
彼女が彼の手を振り払ったと同時。
炎柱をギャングオルカが掻き消し、本物の敵そっくりの形相で足を踏み鳴らした。
「で、次は!!?」
轟と夜嵐の攻撃が突破された。
その一大事に気づいた緑谷が、飛び出した。
それを見てが踵を返し。
「頭打っただろ、動くなよ!」
それらしいことを口走った他校生に、片手を力一杯引っ張られた。
嘘ばかり並べ立てる彼の側から。
一秒でも早く、離れたくて。
肌に爪を食い込ませてくる彼から。
少しでも遠くへ逃れたくて。
は力一杯、彼の手を握り返す。
『離してよ』
(ーーあぁ、どうしていつもいつも)
感情のままに、言葉を選ぶ。
「キミ」が嫌いだ。
大嫌いだ。
「二人から離れて下さい!!」
『手を離して』
「っい……!」
痛みを痛みで返された男子生徒は、顔を歪ませて。
の手を振りほどいた。
彼女は彼に背を向け、飛び立とうとして。
「行くなって!!」
尚も食い下がる彼に
大切な大切なジャケットの背を、力一杯引っ張られた。
『…………………は?』
<えー只今を持ちまして>
騒々しいブザーが鳴っている。
それでも。
首だけ振り返ったは一切表情を変えず。
顔を青ざめさせている彼から視線を逸らさない。
硬直した彼の汚い手をジャケットから引き剥がす為に、ほんの少し。
個性を使った。
はずだった。
その瞬間。
誰もが強い光に視界を奪われた。
ドォン、というミサイルが爆発したかのような豪音がフィールドに響き渡り。
競技場全体に熱風が吹き抜けた。
爆心地となった彼女の近くに立っていた何名かの受験生たちは、訳もわからず宙を舞い。
そんな試験の終末を、図らずも二度引き起こした彼女も、例外なく。
自身の「個性」で
身体を宙に投げ出した。